【Episode92】6歳7ヶ月 僕は石になってしまうと?

自分が幼い頃に、読んだり観たりした本やテレビ番組、映画を息子と共有できるとは思いもよらなかった。泣いたり、心に沁みるシーンも当時とは変わっていて、ドラえもんを息子と一緒にテレビで観ては、不覚にも涙がポロっと出ちゃって、慌ててトイレに駆け込むことも多かった。全く泣いていない息子に、泣いていることを知られるのって、何だか恥ずかしくって。「のび太の恐竜」も、幼い時にはコミック本で読んでウルっともしなかったくせに、映画館で息子と見た時は、のび太くん・ドラえもんとピー助の別れのシーンでは、ハンカチで拭っても拭っても涙が出てきてしまった。“エンドロールが終わって明るくなる前になんとかしないと!”と、夕飯のメニューを考えるという荒業を用いて、エンドロール直前には一旦涙が止まったのに、エンディングで流れたスキマスイッチの「ボクノート」で涙腺が完全崩壊。あの声と歌詞に抗うことなんてできない。流れる涙と鼻水を放置することにした。息子が私の泣き顔を見たのは、多分それが初めてなんじゃないかな?「どうしたと?お母さん。泣きようと?」とかなり驚いていたんだけど、同時に「なぜ泣いているんだろう?」と不思議そうな顔をしてたから、余計恥ずかしくって。ハンカチでガシガシ拭いて、周りを窺うと、私以外にも泣いている大人が結構いたのでホッ。人は涙を流すことで癒され、ストレス解消にもつながるという話を聞いたことがある。喜びも悲しみも一種のストレスといえるから、ストレスだらけの大人の方が、メンタルを平常に保つために、ちょっとでも心が揺さぶられたら涙を流せるようになったのかな?いろんな経験をしてるので、重なっちゃう部分もあるし・・。
この日の息子、私の泣くところを見て、ショックをうけたみたい、ドラえもんをスクリーンで見た感動もすっ飛んでしまって、すっかり大人しくなってしまった。悪いことしちゃったな。
毎週金曜日の夜って、インターの宿題も殆ど出ないから、のんびりゆったり。夕飯後、19時からテレビでドラえもんとクレヨンしんちゃんを観るのはこの頃の日課。それほど好きなのに、ドラえもんの途中で、キッチンで後片付けをしている私のところに来て「お母さん一緒に見よう」なんて言ったり、テレビを消したりすることが続いた。「あれ?ドラえもん、まだ終わってないよ。消して良いの?」と聞くと、「今日のドラえもんは、つまらん(つまらない)!!」それでいて、クレヨンしんちゃんの放送時間になるとテレビをつけて見てるから不思議。最初は“ドラえもんにも飽きたのかなぁ”と思ったんだけど、それだと息子の反応はもっと違うだろうし・・・。数週間の???が終わりを迎えたキッカケは、ドラえもんの時間になったら、ウキウキでテレビをつける息子なのに、コマーシャルの時間になったら必ず「つまらん」と言って消すことがわかったから。だいたい息子が「つまらん!」という時は怖いとき。遊園地のお化け屋敷もジェットコースターも「つまらん!」と言って拒否が続いていた。「つまらん!」と言って、消したタイミングにテレビに映っていたものは、・・・ドラえもん。少し前からドラえもんのテレビ放送中に、春休みに公開される映画の宣伝をしていた。今回の映画「魔界大冒険」は悪魔がでてきて、魔法を使うんだよね。この系統は息子が最も苦手とするところ。特に今回の映画の中にでてくるメドゥーサが1番怖いみたい。常にテレビをおそるおそる観ているし、メドゥーサが画面にでてくると、速攻でテレビを消していた。あんなに好きだったのに、ドラえもんを観るのが苦痛にすらなっているよう。でもドラえもんは大好きだから、とりあえずは放送時間になるとテレビをつけちゃう。理由がわかると、そんな息子が可愛いんだけど、怖がって大好きなドラえもんを楽しめていない息子がかわいそうで・・・。何も知らずにひたすら怖がっているだけの息子にメドゥーサのことを詳しく教えてあげることにした。敵のことを知れば、怖くなくなると思って。
私「○○(息子の名前) メドゥーサって髪の毛はどんなのか知っとう(知ってる)?」
ケイ「ヘビでできとう(ヘビでできてる)」
私「じゃあメドゥーサの目を見たらどうなるか知っとう?」
ケイ「しらん(知らない)」
私「メドゥーサの目を見てしまったら、石になってしまうとよ」
と言った途端、「ギヤァー」と涙をボロボロこぼして泣きだしてしまった。「やけん、鏡を向けると、今度はメドゥーサが石になってしまってやっつけられるとよ」と私は続けて話し、息子を安心させたかったんだけど、それを言う間もなくパニックに陥ってしまった息子。こんなに泣いている息子を見たのはホントに久しぶり。何が起こっているのか、私もパニックに陥ってしまって唖然としていると「僕、テレビでメドゥーサの目を見てしまった。僕、石になると?」と私に必死の形相で聞いてきた。あっ そういうこと?それで泣いていたのね。
私「あなた メドゥーサの目を何回も見とうやろ。しかもメドゥーサの目を見てから何分経っとうね?目を見たらすぐに石になってしまうとっ!しかもメドゥーサと目が合いそうになったら鏡を向けると、今度はメデューサの方が石になってしまうと」
と説明して、やっと息子は平静を取り戻した。今となっては笑い話だけど、あの時の息子の狼狽えぶりは今でも焼きついている。「メドゥーサと目を合わせてしまうと石になってしまいます。さぁ〜て、石にならないようにどの様にしたら良いのでしょうか?」ってクイズをだして、遊びたかっただけなんだよ、お母さんは!息子からすると、テレビを消しちゃうくらい怖かったから、「メドゥーサと戦う時は鏡を持っていけば良いよ」と言ってあげたほうが良かったのかも。息子よ、ごめん!もちろん可愛いメドゥーサが出てくるドラえもんの映画は観に行った。今回はさすがに「観に行かない」て言うかと思ったんだけど、やっぱりドラえもんは観たいのね。息子は鏡を持っていく計画立てていたけど、当日はすっかり忘れてしまい、映画の中でメドゥーサが出てくる度に目を閉じているいるんだもん。私はそんな息子の反応が気になって、映画の中身が全く入ってこなかったよぉ。
この出来事から2年もすると、Percy Jackson & the Olympians(Rick Riordan) やJourney to the Center of the Earth・Around the World in eighty Days・20000 Leagues Under the Sea・A Two Years’ Vacation(Jules Verne)、The Time Machine(Herbert George Wells)、The Hobbit・The Lord of the Rings(John Ronald Reuel Tolkien)などのファンタジー、奇譚にすっかりハマって、映画やDVDも怖がらずに観ていた。私も小さい頃は、この類の本や映画が大好きだったので、息子と一緒に楽しめたのは、本当に良かった。今では映画も一緒に行ってくれないので・・・。