【Episode136】9歳10ヶ月 チビ🐹が家族の一員になりました

息子がインターに通っていた間、年を追うごとに景気が悪くなっていった感がある。通っていたインターでは校長先生とElementaryのヘッドを務めていた先生(どちらも外国の方)がリクルートをしていて、「先生の採用が年々大変になっていくよ」なんてグチをこぼしていたっけ。地方はただでさえ外国人はこないからね。特にこの年は多くの先生と生徒がスクールを去っていったので、リクルートも大変だったと思う。インターに自分のお子さんを通わせている先生は、お子さんがElementaryからMiddleに変わるタイミングで帰国することが多かったな。
同級生のSe Wookは土・日曜日は一緒に遊ぶくらい仲が良かったのに、パパの仕事の都合で韓国に戻ることに。この頃には息子もコンピュータを触るようになっていて、インターを辞めた元クラスメイトとメールのやりとりを頻繁にしていたし、特に韓国の子とは時差もないので、Face timeを使って週一でやり取りをしていた時期もあった。せっかく身につけた英語力をキープするためにも、仲の良かった同級生と英語でのやり取りを継続するのはとても有効だよね。私が子供の頃は、転校したお友達とのやり取りは主に“お手紙”だったけれど、それが今やインターネットで世界のいろんな国にいるお友達と即座に連絡が取れるなんて便利になったものだよ。ただ、いくらコンピュータを使えるようになったところで、“日本にしかお友達がいません”という私のような人間には手紙で充分だと思うけれど、息子はいろんな国に知り合いがいて英語でコミュニケーションがとれる。そんな子はこれからどんどん増えていくだろうから、そういう子供達が成長すると、「今度イギリスに仕事で行くんだけど、それが終わったら休みが取れるからギリシアあたりで落ちあって遊ぼうぜ!」なんてアラブにいるお友達に連絡するようになるんだろうなぁ。羨ましい・・・。
ハムスターの“チビ”は我が家の初めてのペット。元々は、息子がGrade3の時に担当のMrs. Sasakiがご褒美としてプレゼントしてくれたクラスのペットで、去年のゴールデンウィークには我が家にホームステイもしていた(Episode130参照)。その後、息子達が上の学年にあがると“チビ”はSasaki家のペットとして飼われていたけれど、Mrs. Sasakiがスクールを辞めて、家族でカナダに帰ってしまうので“チビ”の引き取り先として我が家に白羽の矢が立ったというワケ。調べてみるとハムスターの寿命は3年くらいなのね。そんなに寿命が短いなんて知らなかったよ。息子がGrade3になってすぐクラスのペットになったので、“あと1年も経たないうちに寿命がきてしまうかも?”、そう考えると正直あまり気乗りがしなかった。1年もしないうちに死んでしまうと分かってペットを飼うのはかなり辛いんだもん。“チビ”が我が家にやってくるのは大賛成。だけど、近い将来“チビ”を看取るのはイヤだし、それが分かっているのもせつない。かなり迷ったけれど、“チビ”の飼育を通して子供達もいろんなことを学んできたはず。そんな“チビ”への感謝の気持ちもあるので、ここは“チビ”の最後の場所として我が家で引き受け、残りの“チビ”の人生をゆっくり・ノンビリ過ごしてもらうことにした。そうなると息子にもちゃんと言い含めておかないと。「“チビ”を飼っても良いけれど、もうおじいちゃん。去年のゴールデンウィークにウチで“チビ”を預かった時は、よく“チビ”をケージからだして遊んでいたけれど、これからはダメ。ケージの中で“チビ”が好きなように過ごさせてやって。そのことを約束できるなら、明日Mrs. Sasakiに“OK”と言ってきて良いよ」と。
約1年ぶりに再会した“チビ”は、以前と比べて随分毛のツヤがなくなっていた。老いを実感してショックだったな。さらにMrs. Sasakiが「もう“チビ”はあまり動かなくなったのよ」と言っていた通り、本当に動かない。去年ウチでホームステイしていた時は、ケージから出すと、部屋中をウロウロ。時には“こんなに小さい体でそんなに速く走れるのぉ?”っていうくらいの速さでチョロチョロ走っていたのに、ほとんど動かなくなっていた。トコトコと歩くとすぐにジッとしてしまう。走ることもない。以前はケージからだすとウロウロして、気が済んだら自分でケージを見つけて自分の背丈より高い位置にあるケージの出入り口をジタバタしながらもよじ登ってケージの中に自力で入っていけたのに、今は自分で出入り口の壁をよじ登ることができなくなっていた。ホントに“チビ”はおじいちゃんになったのね。それ以来、私はケージの掃除をするとき以外は“チビ”をケージの外に出さなかったし、息子も「“チビ”をケージの外にだしていい?」なんて私に聞かなかった。私も息子もケージの中にいる“チビ“の様子を観察したり、話しかけたり、エサを手渡しでやったりはするけれど、とにかく“チビ”にストレスをかけないようそっとしておいた。それでも息子は“チビ”を可愛がっていて、朝起きてすぐや学校から帰ってくると、必ず最初に“チビ”の様子を観察していたし、料理の際に出た野菜の切れ端や果物を“チビ”に食べさせていた。
“チビ”が我が家にやってきていちばん良かったこと、それは息子と私の間に入って立派な緩衝材の役割を果たしてくれていたこと。特にお互い相手にカチンときて文句があるときは“チビ”に言ってた。もちろん 本来文句を言うべき相手は側にいるから、“チビ”に話しかけると相手にも聞えているのだけれど、“チビ”に話しかけることで、言い方が柔らかくなっているから、“そこまで言わなくても”とか“親に対してその口のきき方は?”とかいう類で火の粉が広がるような言い合いをしなくなった。お小言の類は“チビ”を通すと、何となく“おあとがよろしく”的におさまってくれる。チビ”は余計なこと言わずに、ただただ黙って私や息子の話を聞く。しかもどちらの味方にもつかないところが“できる男”って感じなのよねぇ。
我が家のアイドル“チビ”は翌年の夏前に天国へ。お気に入りのココナッツの巣ではなく、餌箱の中で寝るなどして朝から様子がおかしかったんだけど、夕飯を食べている時に、なんとな〜く私の野生の勘が働き、死期の訪れを察知。夕飯を中断して息子をソファーに座らせ、膝の上に“チビ”を置くと、ヨタヨタと歩いて息子のお腹に前足をかけた所で力尽きてしまった。息子に何か伝えたいことがあるかのように、息子を見上げながら。その夜、“チビ”は息子の部屋で過ごし、翌朝お気に入りのココナッツの巣に入れて庭に埋めた。“チビが亡くなったニュースはMrs. Sasakiを通して、インターを辞めた元同級生にもあっという間に伝わり、メールや動画で多くのメッセージが寄せられた。ひとりひとりの“チビ”への思いをみんなで共有できたのもネットの恩恵だよね。多分みんな今でも“チビ”のことは覚えているんじゃないかな?“チビ”は幸せ者だよ!